2016年の北朝鮮を振り返る

EU離脱、そしてトランプ大統領の登場など、世界政治では番狂わせと呼ばれることが起きた2016年という年は、北朝鮮にとってどのような年だったのでしょうか?

国内政治

まずは北朝鮮国内から見ていきます。

36年ぶりの党大会

5月上旬には36年ぶりとなる朝鮮労働党大会が開かれました。金日成時代の途中から開かれなくなり、そして金正日時代には全く開かれなかったこの党大会は中身よりも実際に「開催したこと」にも大きな意味があると考えられるでしょう。

金正恩は2011年から最高指導者となっていますが、最高指導者になった直後は金正恩と党や軍の若干の思想の違いなどがあったため、金正恩はそういった人たちを粛清という形で消し去っていました。

しかし、それから5年がたった今ではもはや「幹部の粛清」というニュースは聞かれなくなりました。これは金正恩と党や軍の考え方が一致するようになったため、金正恩ももはや今の自らの地位は盤石な状態にあると考えていると思われます。

今回の党大会は金正恩にとって「もはや金正恩体制は完璧に整った」と内外に知らしめるメッセージを発信する場だったと言えるでしょう。

ミサイルを撃ちまくった1年

今年の北朝鮮はミサイル発射の回数がかなり多かった年といえるでしょう。2月~5月にかけては大きなニュースにもなりましたが、それ以降も北朝鮮はミサイルを発射し続けました。

過去5年間での北朝鮮のミサイルの発射回数を見てみると・・・

2012年・・・5発(ロケットも2回発射)

2013年・・・6発

2014年・・・20発(この年はロケット砲も多数発射している)

2015年・・・13発(この年から潜水艦からのミサイル発射も行われれている)

2016年・・・35発(12月10日までの発射回数)

いちらん屋のページより。ロケットと称したものを発射したり、ミサイルではなく飛翔体となっていることもあり(実際はロケット砲が飛んでいることもある)、数は正確ではない可能性があります。

2014年の20発も目立ちますが、今年は30発を超えてきました。発射回数が増加した原因として考えられるのは、金正恩体制が盤石になって軍事面の強化に本格的に力を入れることができるようになったことが大きな理由として挙げられるでしょう。

2015年からは潜水艦からのミサイル発射実験も行われており、今後は北朝鮮のミサイルの射程距離ではなく、北朝鮮の潜水艦の活動範囲プラスミサイルの射程距離が北朝鮮の有効攻撃範囲となる可能性も生まれてきています。

別の記事で北朝鮮はミサイルの発射に成功すればしばらくは発射しないだろうと勝手に考えていましたが、今となっては今後もミサイル技術の強化に力を入れ続け、ミサイル発射実験を今後も続けていくものと考えられます。

核実験も2回行われた

ミサイルと並んで脅威となっているのが北朝鮮の核ですが、今年はなんと2回もの実験が行われました。

北朝鮮の核実験はこれまで2006年、2009年、2013年と何年かに1回ペースで行われてきましたが、今年は1月と9月という時期にそれぞれ核実験が行われました。先ほどのミサイルに続いて、今年の北朝鮮は核実験にも力を入れた年といえるでしょう。

核とミサイル、この2つが組み合わされば核ミサイルという恐ろしい兵器が生まれることとなり、周辺国にとって北朝鮮の脅威はさらに増すこととなるでしょう。

北朝鮮への制裁はどれくらい効果があるのか?という記事において、「ワシントンに到達するミサイルが完成した時に、現状の動きに変化が生まれるかもしれない」という感じで書きましたが、この動きを見るに北朝鮮は口だけでなく技術開発という行動を持って本気でこの目標に向かっている可能性も考えられます。

一方で、大規模な洪水も発生した

2016年の9月には台風10号が原因となる災害も発生しました。具体的には、北朝鮮を流れる川の上流部分が台風の被害にあったことによって堤防が決壊、下流となる北朝鮮に洪水の被害をもたらしたものです。

北朝鮮の国民にも大きな被害が出たことから朝鮮中央テレビでも災害に対して国民が一丸となってこの困難に立ち向かうように奮い立たせる報道があったほか、国際赤十字も被災した人たちを助けようと救援するために北朝鮮に入っていきました。

国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)は9月30日の声明で、10月になって雪が降れば被災者が一層の窮状に追い込まれる恐れもあると指摘し、「石炭の供給は途絶え、被災者は木の枝を燃やして暖を取っている。2次災害の危険が現実と化している」と危機感を示した。

引用:北朝鮮の洪水被害、窮状続く 病人増加・寄付も集まらず – CNN.co.jp

国際赤十字は北朝鮮のこの状況に対して支援を求めましたが、北朝鮮がミサイル発射や核実験などを行っている背景から少なくとも日本政府は北朝鮮に対する支援は見送る判断をしました。

国外政治

次は北朝鮮と外国との関係性です。

世界のゴダゴダは「平気」?

冒頭にもあったようにEU離脱やトランプ大統領の誕生など、主に経済的に混乱したことが多かった1年ですが、もともと貿易をあまり行っていない北朝鮮にとってはあまりダメージはないと考えられます。こういう時に外国とのつながりが限定的である北朝鮮はある意味強いと言えるかもしれません。

日本との関係

日本との関係性については、今年は表向きにはあまり動きがなかった1年と言えるでしょう。

日本と北朝鮮の間にある問題として一番大きいのはやはり拉致問題であると考えられます。今年も各地で署名活動などの動きはありましたが、肝心の日本政府が今年は拉致問題に対して大したアクションを起こしていない・・・と思ったらこんなニュースが出てきました。

日本政府が北朝鮮の朝鮮労働党国際部を窓口に9月から11月にかけ、中国の地方都市で少なくとも3回、非公式に接触していたことが19日分かった。複数の日朝関係筋が明らかにした。

日本は外務省の担当者が出席しているもようだが、北朝鮮は金正恩党委員長に近い党国際部担当者を派遣、従来の外務省同士の協議とは異なるルートで仕切り直しを図ろうとしているもようだ。北朝鮮による9月の核実験後にも接触しており、行き詰まっている日本人拉致問題の打開を模索している可能性がある。

党国際部が対日交渉に直接乗り出すのは、2004年の第2回日朝首脳会談以来とみられる。

引用:日朝、中国で非公式接触 – ロイター

12月20日のこのニュースがなければ「日朝関係に関しては本当に何のかかわりもなかった1年と言い切ることもできるでしょう」と結論付けるつもりでしたが、さすがに日本政府もいろいろと陰ながら動いているようですね。

アメリカとの関係

アメリカではオバマ大統領の任期の満了することや次の大統領選挙に対する話題でアメリカの関心は内に向いていたということもあり、アメリカとの関係性もあまり動きがなかったといえる年と言えると思います。

北朝鮮が今年多くのミサイルを発射したのもアメリカが国内でゴダゴダするのを見越してのことかもしれません。

韓国との関係

北朝鮮の核実験などの報復行為として韓国が北朝鮮に対して国境沿いのスピーカーによる呼びかけがあったりなどはありましたが、この反応ももはや「通常運転」となってきているような気がします。また、韓国では10月下旬に起きた朴槿恵大統領の韓国国内を震撼させるスキャンダルが問題でもはや北朝鮮どころではないでしょう。

当然北朝鮮も朝鮮中央テレビなどでこのスキャンダルを痛烈に批判する特番が組まれたりと、逆に北朝鮮を利する事態となっています。

朴槿恵大統領のスキャンダルについてはまだ完全に収束していないのでどうなるかはわかりませんが、もし2017年に大統領選挙ということになれば少なくとも北朝鮮が動きやすくなることは確かだといえます。(朴槿恵大統領は一応2018年の2月まで任期があるのですが、最近になって弾劾が可決される事態になるほどに混乱している今の状況を見るととてもそこまでの任期を全うすることは難しいと考えられます。)

その他の国

その他、国境を接する中国やロシアをはじめ、北朝鮮と諸外国に対する姿勢というものはあまり変化がないといえるかもしれません。これは北朝鮮が核実験を行ったり、ミサイルを撃ちまくったりというようなことをしても、その時は周りから批判されても結局それだけで終わるという今までと同じパターンで事態が収拾している事からも言えると思います。

テレビで北朝鮮が核実験やミサイル発射を行っても「またか」と思っている人は多いと思います。

まとめ

金正恩は2011年から最高指導者の立場にいますが、その地盤が盤石なものとなり、また政策も金正日時代から少し変化はみられるものの、大きな部分では変化していないのである意味「今年の北朝鮮は通常運行だった」と言えると思います。それに加えて、北朝鮮の軍事面における強化はゆっくりとですが確実に進歩しているといえると考えられます。

党大会によって金正恩体制が内外に明白となったということは、北朝鮮に対する接し方は1年や2年ではなく、5年や10年という長い目で見ていかなければならないかもしれません。そしてこれは日本にとっては拉致被害者が戻ってくる可能性も依然としてわからないという状況がずっと続くということにもなります。

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