2017年の北朝鮮を振り返る

2017年の北朝鮮は非常にあわただしく動き、国際社会をたびたび驚かせた年と言えるでしょう。

2017年、日本の今年の漢字は「北」

日本漢字能力検定協会が毎年行っている、今年一年を漢字一文字で表す「今年の漢字」は結構有名だと思われますが、2017年の漢字は「北」と発表されました。この北には北朝鮮の北が含まれていることは明白と言えるでしょう。

今年の漢字は公募で決められるため、多くの日本国民にとって今年一年は北朝鮮のインパクトが一番強かったと言える年でしょう(もちろん、他の理由で北を選んだという人もいます)。

北朝鮮2017年の出来事

そんな北朝鮮の今年一年の出来事をまずは表でざっくりと振り返ってみることにします。

出来事
1月 韓国が対金正恩を中心とする特殊部隊を編成していることに対して「露骨な宣戦布告」と非難。南北関係の険悪さが改めて浮き彫りとなる。
2月 マレーシアにおいて金正男が暗殺される。北朝鮮による犯行とほぼ断定できると考えられるが、マレーシアは北朝鮮にいる自国の外交官の身を案じて追及を避けたため完全な真相はわからず。
関連記事:ミサイル発射、そして身内の暗殺 北朝鮮で何が起きている?
3月 米韓合同軍事演習に対抗して弾道ミサイルを発射する。米韓と北朝鮮との間でさらに緊張が高まる。
4月 北朝鮮が核実験をするのではないかという危機感からアメリカが空母を派遣するなど、緊張がさらに高まる。しかし、この月に行われたのは多数のミサイル発射と15日の軍事パレード、25日の砲撃演習であり、核実験は見送られた。
5月 中国を名指しで非難し、中朝関係の悪化が見られた。それ以外に関してはミサイルを打ちまくっていること以外に大きな変化は見られず。
6月 4月に北朝鮮に入国したアメリカ人学生がこの月に解放されるが、こん睡状態に陥っており、同月亡くなった。トランプ大統領はこれを受けて北朝鮮への独自制裁を強める。
7月 米軍が韓国上空で戦略爆撃機による訓練を実施。北朝鮮はこれを「核戦争になりかねない危険な行為」と強く非難。
8月 日本列島上空を通過する軌道を取った弾道ミサイルを発射。日本ではJ-ALERTが作動して大騒ぎに。
9月 6度目となる核実験を実施。これを受けて国連は北朝鮮の経済制裁をさらに強める決議を採択する。
関連記事:北朝鮮、2度の日本越えのミサイル発射 そしてついに6度目の核実験
10月 ミサイル発射を控えるようになる。この間、北朝鮮による「電磁パルス攻撃」「日本への原発に攻撃」など様々な話題が出るが、当の北朝鮮はおとなしい。
11月 前半は10月と同じくミサイルを発射せず。この間北朝鮮、中国、アメリカ、韓国、日本などがいろいろ話し合いを行い、対話ができるのではという雰囲気も流れていたが、結局うまくいかなかったのか新型の弾道ミサイルを29日に発射する。
また、13日に北朝鮮軍の兵士が軍事境界線を強行突破して韓国に脱北するという事件も起きる。
12月 日本に北朝鮮からの漁船が多数漂着する。生存者が窃盗を働いて被害も被った。

こうしてみると、確かに今年1年の北朝鮮は非常にいろいろあったと言えるでしょう。上半期のまとめはこちらの記事で行いましたので、本記事では下半期の7月以降の北朝鮮について見ていきます。

核実験を行い、経済制裁が強まった北朝鮮

9月3日、北朝鮮は6度目となる核実験を実施しました。この行動には国連でも取り上げられ、制裁の強化へとつながりました。

このあたりの内容は以下の記事で詳しくまとめてあります。

関連記事:北朝鮮、2度の日本越えのミサイル発射 そしてついに6度目の核実験

水面下での交渉

9月15日にミサイルを発射してからは、しばらくの間北朝鮮はミサイルを打つことを控えるようになります。それまで当たり前のように発射していたミサイルを急に発射しなくなっただけで不気味だと指摘されるくらいに北朝鮮の動きには謎が多いと言えるでしょう。

電磁パルス攻撃

この間、テレビでは「北朝鮮による電磁パルス攻撃」なるものが話題となりました。

電磁パルス攻撃とは、核ミサイルを上空で爆発させて、そこから発生する電磁パルスによってその下にある都市の機械やコンピューターなどを機能不全に陥れるというものです。

電磁パルスは送電線を伝ってコンピューターなどの電子機器に侵入。その電圧は5万ボルトに達するため、機器はIC(集積回路)の機能停止で損壊し、同時に大規模な停電も発生すると予測されている。核爆発に伴う熱線や衝撃波は、地上には届かない。

影響範囲は爆発の高度や規模によるが、高度100キロで広島型原爆の3分の2に相当する10キロトン(TNT火薬換算)の場合、日本全土をほぼ覆う半径約1100キロにも達する。

1962年に米国が北太平洋上空で行った高高度核実験「スターフィッシュ・プライム」では、高度400キロの宇宙空間での核爆発で電磁パルスが発生。爆心から1400キロも離れた米ハワイ・ホノルルなどで停電が引き起こされ、その威力が実証された。

引用:「電磁パルス攻撃」の脅威とは? 高高度の核爆発で日本全土が機能不全に 防護対策進まず… – 産経ニュース

電磁パルス攻撃はアメリカの核実験でその影響を受けたという結果が出ており、本当にこの攻撃が実行されたならば、核による死傷者は出ないものの、私たちが使用している電化製品やパソコン、スマートフォンなどは使用不可能となり、会社であれば営業に大きな影響が出ることは間違いないでしょう。

しかし、こういった「北朝鮮が○○するのではないか?」という話題がいろいろ上がる中、当の北朝鮮はずっとミサイルを発射しないという静かな状況が続いていました。おそらく、アメリカや中国が行っている交渉の行方を注視していたものと思われます。

対話かなわず 新型弾道ミサイルの実験を行う

アメリカも中国もかなり本気で頑張ったのかもしれません。しかし、交渉の最終結果は「アメリカの北朝鮮のテロ支援国家指定」というものになり、水面下で行われていたと考えられていた交渉は決裂しました。

これを受けてか、北朝鮮は11月29日に弾道ミサイルを発射して再び国際社会をざわつかせました。

今回発射された弾道ミサイルは火星15であり、ロフテッド軌道をとって日本海に落下しました。

ついにアメリカ本土全域を射程にとらえたか?

この日に発射されたミサイル「火星15」は今回初めて発射されたものであり、通常起動で発射した場合の射程距離は情報源によっては約13,000kmとも言われており、非常に長いものとなっています。

これは平壌からワシントンD.C.の距離よりも長く、もしこの射程が本物であった場合、北朝鮮はついにワシントンやアメリカ本土すべてを直接狙うことができるミサイルの開発に成功したということになります。

しかし、この射程距離は情報源によってばらつきがあり、さらにはロフテッド軌道の落下時に空中分解したという話も出ているため、火星15の信頼性はまだ低いとも考えられます。

どちらにせよ、北朝鮮がこの火星15の開発を進め、今後も発射してくる可能性は非常に高いと考えられます。

北朝鮮兵、38度線・板門店強行突破の決死の脱北

脱北を行おうと思ったとき、メジャーなルートとして候補に挙がるのが「中国を経由して韓国に向かう」というものです。

関連記事:北朝鮮から脱出する脱北者たち 脱北が成功するまでのルートは長い

北朝鮮と韓国の軍事境界線は地雷原も多く、軍が監視の目を光らせているためここを通って脱北することは非常に危険な行為と見られていました。

しかし、11月13日、北朝鮮兵の一人がこの軍事境界線の板門店に向かって車で思いっきり強行突破、溝にはまって動けなくなると車を放棄して韓国に脱北するという大胆な脱北者が現れたのです。

引用:BBC News Japan

※この動画には音声はありません。

この話題は日本でも大きく取り上げられ、発表された映像には警備をしていた他の北朝鮮兵が様子がおかしいことに気づき、自分達からしてみれば「裏切り者」を射殺しようと必死に射撃している内容が映し出されています。

このうちの一人が熱くなって軍事境界線を突破して韓国側に侵入、それに気づいたのかあわてて北朝鮮側に戻るという行動も見られました。

脱北の決め手になったのは韓国の拡声器

銃撃を受けながらも、何とか一命を取り留めた北朝鮮兵が脱北するきっかけとなったのは韓国側が北朝鮮側に向かって拡声器で放送していた内容が決め手となりました。

韓国からの放送は単に北朝鮮の体制を批判するだけでなく、韓国の文化(K-POPの音楽など)もいろいろ放送されており、この北朝鮮兵はその影響を受けて北朝鮮に疑問を持ち、韓国に脱北したものと考えられます。

この拡声器は韓国が始めた時から北朝鮮が猛烈に批判していましたが、今回の脱北事件から言えることは「拡声器は有効である」ということだと思われます。

脱北した北朝鮮兵は一命を取り留め、決死の脱北は成功しました。

38度線突破は過去にも何回かあった模様

中国を経由して脱北するルートに比べると38度線ルートは危険すぎるものの、この事件以前には全くなかったわけでもなく、何回か脱北を行ったという記録があります。

2015年6月15日、韓国・聯合ニュースによると、北朝鮮軍兵士1人が同日、非武装地帯の韓国軍警備所で、韓国軍に帰順した。

韓国軍関係者は「15日午前8時ごろ、中東部戦線で北朝鮮軍兵士1人が韓国軍警備所で帰順した。軍は身柄を確保し、関係機関に引き継がれ、帰順意思を確認した。帰順した兵士の年齢は10代後半と推定される」と説明した。さらに、「帰順兵士の所属など具体的な内容は、調査を経て公開することになるだろう」と付け加えた。

帰順によって、南北間で一時的に緊張が高まったが、銃撃戦のような衝突は発生しなかった。北朝鮮軍の特異な動向も確認されていない。

北朝鮮兵士が軍事境界線を越えて帰順した事実が公開されたのは、2012年10月、北朝鮮の兵士1人が東部戦線から南に越えてきた「ノック帰順」事件(東部戦線最前方にある鉄柵を越えて韓国側警備室の扉をノックして帰順した)以来初めてとなる。

引用:北朝鮮軍兵士、38度線を越えて亡命=韓国ネット「どうやって地雷を避けて来たんだ」「苦労して来たのにMERSが…」 – Record China

今回の脱北が大きく取り上げられたのは、板門店から脱北しようとしたことによって、その様子が韓国側からのカメラ映像に映り、脱北の様子が動画という形で残ったこと、そしてこの映像を公表したことなどで話題が大きくなったと考えられます。

その後板門店を警戒する北朝鮮兵は全員交代したという情報が出ており、北朝鮮はここでの警戒をより一層強めたと考えられる一方で、こういった情報は体制を揺るがしかねないために北朝鮮では一切報道されませんでした。

そして、必死に射撃したが脱北を許し、交代させられた北朝鮮兵がどうなったのかは不明です。

これ以外にも、ほかにも38度線を超えて亡命を図ろうとする北朝鮮兵のニュースがいくつか挙げられていることから、北朝鮮兵の状況は相当過酷な状況にあると推測できます。

日本に漂着してくる小さな漁船

北朝鮮のミサイル発射に騒ぐ中、日本海側に住む人たちは北朝鮮から流れ着いたとみられる漁船を発見するようになります。

北朝鮮の過酷な漁業

北朝鮮から漁船が流れ着くということは過去にもありました。しかし、2017年はその数が例年と比べて異常な数となっているのです。

海保の集計によると、漂流・漂着は25年80件▽26年65件▽27年45件▽28年66件-で推移していたが、今年は13日正午時点で83件。多くは木造船で、船の一部とみられる木片も含まれている。月別では12月に入って24件となり、最多だった11月の28件に迫るペースだ。

引用:漂流・漂着船83件、平成25年以降最多に – 産経ニュース ※2017年12月の記事です。

北朝鮮はきつい経済制裁を受けているため、食料を得ることも難しい状況となっています。そのため、北朝鮮は少しでも食料を手に入れようと漁業にも力を入れているのですが、今年は漁業を行う条件が非常に厳しくなっているのです。

普通であれば、北朝鮮は自国の領海内で魚を捕るのですが、自国の周辺海域の海洋権を中国に売却しているため、北朝鮮の漁師は日本の排他的経済水域まで進出しなければならないという事情があるようです。

そこで北朝鮮の漁師が目を付けたのが日本海の大和堆という漁場なのです。が、この場所は荒れやすい場所でもあるため、小さい船で漁業を行うことは非常に危険な行為でもあります。

日本に漂着。生存者が日本で窃盗を行い問題となる

経済制裁を受けている北朝鮮は大きい船を動かす石油もあまり入ってこないため、小さい木造船で漁業を行わなければならないという非常に厳しい状況となっています。そのため、運悪く荒れた波にのまれた木造船とその乗組員が日本に漂着してきているという状況が起きているのです。

北朝鮮の漁師が生存した状態で発見されることもあり、その漁師が日本で犯罪行為を働いたり、またこれに乗じて工作員が秘密裏に日本に忍び込んでくるという危険性を指摘する専門家もいます。

北朝鮮の漁師による窃盗行為に関しては朝鮮総連が弁償を申し出ましたが、その割には態度が上から目線な上(弁償する代わりに被害届を取り下げるように要求してきた)、弁償も窃盗の被害額に比べると非常に少額なものであり、交渉はわずか1時間で決裂しました。

北海道松前町沖の松前小島の施設から発電機を盗んだとして北朝鮮籍の木造船乗組員3人が逮捕された事件で、朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)側と地元漁協は25日、被害の弁償について協議を行った。だが双方の条件が折り合わず、合意に至らなかった。

引用:漁協と朝鮮総連、弁償額折り合わず 木造船員の盗難容疑 – 朝日新聞デジタル

弁償と呼ぶにはあまりにも理解しがたい内容からして、朝鮮総連は最初から謝罪の気持ちなどなく、北朝鮮の漁師を何とかして取り返すことだけに執着していたものと考えられます。

海上保安庁の対応

大和堆は日本の排他的経済水域であるため、この地域で北朝鮮(を含む外国船すべて)が勝手に漁をすることは当然違法行為に当たります。これに対しては当然漁師などからも強い批判が挙がっていることは言うまでもないでしょう。

海上保安庁も北朝鮮の木造船に対して放水によって排他的経済水域から追い出し続けている状況が続いています。違法操業を行う北朝鮮の漁船に対して有効な手段として「採れたイカに水を思いっきりぶっかけて台無しにする」事が効果的な方法だとしています。

引用:ANNnewsCH

※音が出ます。

この動画の投稿時刻は17年8月31日であり、動画の中では「ほとんど姿を見かけなくなる」となっていますが、海上保安庁がここの警戒を緩めた瞬間にまた数が増えてきたため、まさにいたちごっことなってしまっています。

まとめ:ミサイル開発はさらに前進 諸外国との関係は変わらず

北朝鮮のミサイル技術は間違いなく前進していると言えるでしょう。新型ミサイルの発射や核実験によって北朝鮮は核武装への道をゆっくりと、着実に進めていることは明確と言えます。

周辺国の韓国、日本、そしてトランプ大統領となったアメリカは強気で北朝鮮に対する圧力をかけますが、これに対してロシアは常に北朝鮮には慎重な姿勢を取り続け、中国は北朝鮮を暗に擁護しようとするも、北朝鮮からの挑発を受けて批判したりなどあやふやな状況が続きました。

日米韓の連携も盤石なものとは言えず、韓国の文在寅が9月に北朝鮮への人道支援を行うという発言をして日米を混乱させることもありました。

アメリカの大統領が変わってから初めての年となった2017年、トランプ大統領が北朝鮮に対して今までにないようなことをするのではないかという予想も立てられましたが、振り返ってみればまだ「昔のアメリカに戻っただけ」とも言えなくもないような気もします。

そして、日本にとって重要な拉致問題に関しては、トランプ大統領が日本で起きた拉致問題を取り上げて北朝鮮を強く非難したということくらいしか話題がなく、水面下での交渉もどうなっているのかさっぱりという日本にとっては残念な1年となってしまいました。

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